「損壊力」ー損壊の美意識。
「損壊」しているから補おうとし、そこにパワーが集結する。それが『芸術』である。
ワシントンのフリーア美術館所蔵 100年以上前の日本の楽焼きの作品がある。陶工がつまんだ指の跡が残っており、100年の間に 割れた形跡も残っている。修復した職人は 割れ目を隠すのではなく 金蒔絵を施して 割れ目を強調した。
楽焼における金継ぎと言う技法である。
割れたり欠けたりした陶磁器を漆(うるし)で接着し、継ぎ目に金や銀、白金などの粉を蒔(ま)いて飾る、日本独自の修理法で、修理後の継ぎ目を「景色」と称し、破損前と異なる趣を楽しむ。この茶碗は一度割れたことにより 作られた時より なお一層美しくなったのだ。 この割れ目は創造と破壊 コントロールと受け入れ 修復と 新しいものを作り出すこと 私たちは皆 その循環の中で生きているのだということを伝えている。
芸術家の永遠のテーマはクオリアにある。
古いものは古いから価値があるのではない。 機能的で使いやすいから長い間愛されてきたという時間性に本当の価値がある。 また、欠けてたり、歪んだり、汚れたりしているところに、本当の美を見いだす。
アッセンブリー(Assembly)とは、 パーツ単体ではなく複数が組み合わされた 構成ユニットを指す言葉である。アッサンブラージュとは。寄せ集めること、そして、未完全であることである。 壊れたら修理すればいいのだ。そのことによって価値が下がることはないのだ。
「損壊の美意識」ーリ・コンシャス
リ・コンシャスとは「生活の簡素さ」という人間の生き方のテーゼであり、芸術享受や芸術表現の問題であると言える。 「芸術」に関する「表象」の問題を美術の内部からの単なる表現の問題として捉えず、「生活」という次元から根本的に問う態度を知らしめる必要がある。
リ・コンシャスの芸術運動はバウハウス以前のバウヒュッテのアーツアンドクラフツに立ち還ることにある。その主体は『小工』という、無造作不作為のプリミティブでアールブリュットな小家と小工芸を目指す建築職人組合である。豪邸であれ、バラックであれ、あらゆる所に簡素が必要なのである。
バウヒュッテは「アートと環境とメカの統合」を目指した。「バウヒュッテは、一つの理念である」と言われる。それは今日においても有効である。また、建築こそ、すべての造形活動とすべての芸術および技術を包括する総合芸術であると規定していた。
『小工』は特に芸術の教育や訓練を受けておらず、名声や賞歴を目指すでもなく、既成の芸術の流派や傾向・モードに一切とらわれることのない生の表現をする職人である。制度的な倫理や主要なイデオロギーに頼らず、様々なところから集めた断片を統合して、独自の生き方の道筋や美学を作り出す。
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