自主防衛による新たな徴兵は若者ではなく、60ー65歳の高齢世代が「公共性概念」としての機能を果たすべきである。
トランプは「アメリカの若者が日本のために血を流して、日本の若者はアメリカのために血を流さないのは不公平だ。これを考え直さないと日本から米軍撤退はありえる」
日米安保条約の片務性の矛盾をついたものであり、「不公平」という主張はトランプが正しい。米軍滞在費の負担を増額してもこの片務性の問題の本質は解決しない。
ここは在日米軍の撤退が合理的で摂理としても一番正しい選択ではないか。コストーベネフィットのその場その場の損得ばかり考える、世界観を持たない指導者・政治家は最終的には国益を損なう。
しかし、そのことは日本の核武装とういう短絡的な文脈には決してならない。現有の戦備の自主防衛により「日米基軸」という呪文から脱却し、日本人は合従連衡の外交と東アジアの壮大な軍略構想をのビッグピクチャーを描いていく必要がある。
日本の若者に対してこれ以上の負担をかけてはならない。自主防衛による新たな徴兵は若者ではなく、60ー65歳の高齢世代が率先垂範による「公共性概念」としての機能を果たすべきである。
確かに日米同盟は、戦後最大の外交資産だ。それは、日本だけではなく米国にとっても同様であり、東シナ海、シーレーンでの日米協力、衛星などを活用したインテリジェンス、対中国外交における日米連携、いずれは朝鮮半島の統一が両国の安全保障上の最重要課題など、在日米軍撤退後、矛の機能を持たない自衛隊のみでわが国の安全を守れるほど、東アジアの安全保障環境は生易しいものではない。
また、日本政府は、外交についても国防についても、エネルギーや食糧や医療についてさえ重要政策を自己決定する権限を持たされていない。アメリカの年次改革要望書や日米合同委員会などによる要求を忠実に具体化できるアメリカの国益を最優先的に配慮できる人間しか日本の統治システムの管理運営にかかわることのできる構造が70年かけて出来上がってしまったのである。
しかし、このような構造がいつまでも続くわけはない。戦争リスクと防衛コストの問題から、現実問題として日米安保にならざるを得ないというような、こうした〝日米安保お花畑〟論があたかも正論であるかのような専門家のもっともらしい評論は、アメリカという「仕組み」に対する妄信と視野狭窄からくる、意識の指向性による意味づけと思い込みに過ぎない。
在日米軍が撤退したら、中国は尖閣のみならず沖縄を獲りにくるのか。この地域の将来がどうなるかは結局のところよく分からない。これはビッグデータから一部を切り取り、知ったかぶりの豆知識で知識派を気取る政治家・学者も同様に予測は不可能である。多くの国が平和と反映を享受するようになるかも知れないが、そうはならない、あるい一時的にせよ大きな混乱が起こるかもしれない、というシナリオも考え得るのである。しかし将来がよく分からないということは、この地域の国々がどのように考え行動するかによって状況を制御できるかもしれないということを示唆している。
政治体制の違いや深刻な領土紛争を抱えた東アジアにおいて多国間の協力・対話の枠組みを構築しようと考えても、NATOのように地域の国をほぼ全部含んだ強力なものができるとは期待しにくい。
台湾問題やいくつかの領土紛争について根本的な和解や解決は非常に困難であり、中国を含む東アジア諸国の国力の変化に際して安定した国際秩序を維持する必要がある。
今後100年間という長い期間で考えれば米国が一国で世界の安全保障を支え続けることは不可能であり、世界の安全保障を考える余力のある国が政治的・軍事的な協力関係を構築しておくことは、将来の不安を軽減する為の重要な布石であるが、これらの可能性についても未知数である。
従って東アジアや世界全体の安全保障は、国家ー共同体的な発想ではなく、非国家ー公共体の構築を視野に入れた外交的・政治的提携関係に変容していくべきである。その際の主体は、「政府」ではなく、日本は地域の安全と繁栄についての主体的な現状認識と将来ビジョン、政策提言能力が必須である。
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