「三院制ー未来院」の意義は「地球上の未来における民意の反映」である。
未来のヴェールと原初状態における〝未来感覚〟を
持った〝セネター〟たち。
現在の日本の二院制は、一票の格差問題や参議院の「衆議院のカーボンコピー」など「参議院不要論」が叫ばれているが、国会議員が一院制というテーマを本当に追及できるのかといえば、それは不可能なことである。自分が議員という地位や身分を失う背中合わせの議論になるからだ。そこで、国会議員以外で構成する第三者の会議で大ナタをふるってもらうとか、あるいは、国会議員の任期を一期だけにして再選できないようにして、次の選挙に利害関係がない人の数を半分以上にし、自分の利害打算を抜きで純粋にあるべき姿について議論できる基盤を構築することも検討されるが、もとより、一院制を実現するには、二院制を定める現行憲法を変えなくてはならないために、一院制議論のフィージビリティ(実現可能性)は極めて困難なものであると言える。
未来を見据えることで、様々な制度が限界が近づいて来ていることを知り、理論的には衝突を避けるための予防策を取ることができる。しかし、実際に解決するのは難しい。なぜなら、将来を見据えた政策というものは、たいてい明日のために今日を犠牲することを求めるからだ。懸命な政策は、短期的に利益を上げることを狙った拡大を阻もうとするからだ。短期的視野に立つ有権者が力を持つ民主主義社会や、短期的な利益を追求する投資家が支配する自由市場において、そうした、政策を遂行するのは難しい。政治が異なる利害の調節を行なう作業である以上、多数の市民階層で代表されるものとは別の視点からの利害を何らかの形で反映するメカニズムが存在しなければならない。それは普遍的や未来的であったり、他国や地球全体、少数民族であったりする。したがって、上院に相当する議院の選出メカニズムは下院に相当する議院とは異なっていることが好ましいのである。または、既存の機構や制度、または政治家に変革を求めるよりも、オルタナティブな「三院制」の創生を図るのが極めて合理的である。
「未来院」の存在は、学問だけではなく、政治においてもそれぞれの立場固有の特殊存在を構築してそこで活動を行う。衆議院や参議院という既存の両院とオルタナティブの「未来院」とでは物理学的には同じ物を見ていても定立されている存在の様式と範囲が異なる。さらに、そのことは政治だけではなく、経済、法、そして人々の日常生活においても変わることはない。人とは常に各場面で特殊存在を定立して生きている。ただ、私たちに必要なことは、そこから一挙に抽象的で空疎な「存在」へと移行することではなく、特殊な存在の中に留まりそれを具に観察することなのだ。その観察は物理学のように様々な現象を説明・予測する基礎原理の発見を目的とするものではない。特殊な存在の様相、それが生まれ・消えていく有様とその背景を丹念に描き出していくことが目的となる。ただ、そこで様々なドグマやイデオロギーに囚われて独善的な見方を存在に押しつけないように注意が必要となる。
パラダイムの変化は、政治的、あるいは経済的な意思決定の仕組み(議会や市場)によって導かれるものではない、新たなパラダイムが現れ、その優位性を示し、次第に現行のパラダイムに取って代わっていくものなのだ。
パラダイムシフトを呼び起こすためには、現世代の「政治家」と呼ばれる層のその射程の「狭さ」への反動として、政治思想、哲学、神学、自然科学、歴史思想、へとその思想射程を拡大し、様々な領域を超え、圧倒的な正義の領域を包摂し律する芸術思想運動を展開していく必要性がある。本来「政治家」とは圧倒的イノベーションの実践者でなければならない。いち早く未来に目を向けて、その予想図を持続可能な社会へと変換する人々を指すのである。
「未来院」の存在は別に誰かが「そうしよう」と決めるわけでもないし、主導するような社会理論があったわけでもない。集団的な叡智が発動するときというのはそういうものである。その主体とは〝未来のヴェール〟による原初状態として未来感覚を持った〝セネター〟である。
相互に無関係なさまざまな〝セネター〟がパブリックネスに相互に無関係なエリアで群発的に同じ行動を取る。今起きているのはそれである。『「個」の暴走を止めろ。変化の速度を落とせ」というのが全世界で起きているさまざまな現象に通底するメッセージである。』
この「グループ」は、目先の利益に奔走する有権者の顔色を伺いながら、「政策の一致」という豆知識や小論に振り回される、現世代の「政治家」を一次元超えた存在で、参加者たちが異なった価値観・世界観を持ち、深いレベルでの一致を無理に目指すことなく、お互いの価値観・世界観に対しては干渉せず、共通の利益に関わる公的事柄に関してのみ一定のルールの下で集団的自己統治を行う。唯一の共通点は、遠い未来を見据えているということだ。この「グループ」には将来的には国家や団体の、先見の明あるリーダーも参加する。人類の長期的な未来のために戦うことを目的として組織されたNGOや世界組織も、この集団の強力メンバーに名乗りをあげるはずだ。
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