憲法9条は、政治アーチスト「狂人」幣原首相によって生まれた、 すばらしき「滑稽」!



日本国憲法は「国民主権」、「平和主義」、「基本的人権」などの多視点を極端に推し進め、様々な角度から眺めた対象物を、二次元画面上に再構成している。そもそも、幣原は憲法発案においては、四苦八苦の上、平面画面に様々の視点からの「理想」の立体表現を試みた。それは従来の既成概念では理解し難い、「滑稽」で子供が描く「キュビズム」のように見える壮大な「ビッグピクチャー」だった。また、憲法9条は、内容だけではなく、その成立プロセスについても高度な仕掛けが駆使された、深謀遠慮の「トリックアート」でもあるとも言えるだ 。 

憲法前文でも、「主権が国民に存する」と国民主権が述べられているが、「国民主権」と「国家主権」は、完全に別物ではなく、実際は、同じ一つの概念の「内側」と「外側」といった関係で「存在」しているのである。「平和主義」や「基本的人権」についても同様である。憲法9条はアメリカから押し付けられたという説もあるが、「幣原がマッカーサーを欺しきったのである。幣原のすごさは、マッカーサーだけではない、米側、日本側双方の憲法改正にたずさわった人々、さらには後世の日本人一同も欺しきったというところにある」。幣原は憲法9条の「滑稽」さを十二分に理解していたばかりか、まさにその「滑稽」さを日本の武力にしようとしたのである。

日本国憲法は、人類社会が追い求める理想のゴールであり、憲法前文後段にも、「人類普遍の原理」であって「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」となっている。理想に背く内容であれば、改正に向けてのコンセンサスは得やすいが、変えようがないから、事態が厄介で問題が複雑化している。つまり、憲法条文の言葉の問題ではなく、日本人の生き方そのものが問われていることを認識しなければならないのだ。ここに来て今さら、憲法9条の持つその「滑稽」さについて、いくら議論を繰り返しても意味が無い。公理が現実的かどうかは関係ない。基本のルールなのである。

戦後日本社会は民主主義の形成に向けて、HECP(人権・環境・コミュニティ・公共)を様々な視点から、複雑な多元方程式を丁寧に解きほぐしていくという、本来行われるべきプロセスが行われず、政治家や政党は結論ありきの「見た目」の議論により、二項対立を煽り、国論を二分化し政局にしてしまった。政治家の役割は「見えるモノ」ではなく、「 在るモノ」を議論しなくてはならないはずであり、また、日本国民も、自らが享受するばかりではなく、その運用に関しては様々な「命題」を導き出すための「想像力=想像する力」と「水平力=水平にする力」(中立力)が伴っていなければならないのである。

改憲派が主張する「集団的自衛権」や「積極的平和主義」という「命題」に対して、護憲派にとっての「水平力」(中立力)とは一体何なのか。中立で一番に最初に思い浮かべるのは、永世中立のスイスという国家だ。スイスは、単に「戦争に巻き込まれたくない」という意識から中立を是としているのではなく、まず「中立を守る」という思想を是とし、そのためならば戦うことも厭わない覚悟がスイスにはあり、残念ながら日本人の多くは、単に「戦争に巻込まれたくない」という意識の上に成り立っている。国土を焼き尽くしてでも、外からの侵略や攻撃とは闘い抜くという、スイスという国家が持っている覚悟との違いである。幣原は「軍隊のない丸裸のところへ敵が攻めてきたら、どうするのか。それは死中に活だよ。一口に言えばそういうことになる。敵が口実をつけて侵略した場合でもこの精神を貫くべきだと僕は信じている。そうでなければ今までの戦争の歴史を繰り返すだけである。」と述べている。

また、女性や子供を誘拐し、自爆テロなどの戦闘員として仕立て、世界中を震撼させているイスラム過激派「ボコ・ハラム(Boko Haram)」をはじめ、世界中には様々な深刻な人権侵害が存在している。地球の裏側で立ちはだかるどんな小さな問題も、決して他人事ではなく、また、それぞれが個別の問題ではなく、人と地球と社会の包括的問題として捉える「想像力」が問われているのである。

幣原は憲法9条の理念について、「非武装宣言ということは、従来の観念からすれば全く狂気の沙汰である。だが今では正気の沙汰とは何かということである。武装宣言が正気の沙汰か。それこそ狂気の沙汰だという結論は、考えに考え抜いた結果もう出ている。」と述べている。そして、「要するに世界は今一人の狂人を必要としているということである。何人かが自ら買って出て狂人とならない限り、世界は軍拡競争の蟻地獄から抜け出すことができないのである。これは素晴らしい狂人である。世界史の扉を開く狂人である。その歴史的使命を日本が果たすのだ。」と自身の言葉を締めくくっているのである。

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