【Best possible chance 2016】
ストップ!ザ・〝日米安保お花畑〟論
トランプの外交面での考え方は従来の米国とは一線を画するもので。いわゆる「孤立主義」。オバマ政権でも、アメリカはもはや世界の警察官でないというなど、「孤立主義」への回帰が見られた。これが、中途半端なオバマ外交という批判を招き、シリア問題、中国問題、ウクライナ問題などで中国やロシアの覇権の台頭を許し、世界平和を不安定にしたといわれている。
日本においては、戦争リスクと防衛コストの問題から、現実問題としては日米安保に頼らざるを得ないとする、〝日米安保お花畑〟論があたかも「正論」であるかのような専門家のもっともらしい評論は、アメリカという「仕組み」に対する妄信と視野狭窄からくる、意識の指向性による意味づけと思い込みに過ぎない。
自主防衛コストは、貿易縮小などによる経済影響を含めて、10年間で新たに約25兆円かかるという試算もある。日米同盟コストに今の防衛関係費を加えても6・7兆円と比べると膨大な予算が必要になる。
しかし、国防を〝コストーベネフィット〟という図式で、その場その場の損得ばかり考える、「世界観」を持たない指導者や政治家は最終的には国益を損なう。現状の基地が本当全てに必要であり、米軍撤退により、膨大な防衛費が発生したとしても、それは日本国民が負担せざるを得ないのは当然である。
日米安保による共同防衛か、コストの増大でも自主防衛か、また死中に活を求める非武装中立がいいのか「正解」など誰にもわからないが、専門家の「予測」はことごとく外れることを忘れてはならない。
トランプの台頭は、アメリカという〝場面〟で展開される〝エスタブリッシュ〟と〝マルチチュード〟の囲碁戦であり、アメリカ大統領は「チェス」の王様ではなく、トランプもヒラリー、サンダースも一つの「囲碁」の駒に過ぎないのだ。
「チェス」の駒は、その役割に応じてコードに沿った動きをするが、これに対して「囲碁」の駒には戦線もコードもなく、戦略如何によって、いかなる地点にも出現しうる。「囲碁」の駒は、突然現れ〝パラダイム・シフト〟を呼び起こすのである。
〝パラダイム・シフト〟とは、個の逆転である。「人には、劇的に考え方や感性が変わる瞬間がある。」それまでの常識が一気に覆り、新しく目が覚めたような気分になる。このような体験を〝パラダイム・シフト〟と呼ぶ。
世界中で群発する〝マルチチュード〟は連帯する意識をそれぞれの主権国家に影響を及ぼすという構図が形成され、様々な場面に対して行動で示していき、地球上の〝失った人々〟を代表するいわば〝世界最大の非国家〟となる。
現在の〝場面〟において最も必要なのは、状況を劇的に変化させる「捨て石」である。「捨て石」とは、後々の局面で自らの形勢を有利にするため、わざと相手に取らせるように打つ石のこと。さしあたって効果がなく無駄なように見えるが、将来役に立つことを予想して行う行為のことである。
囲碁棋士の井山名人は答えの出ないところで強さを発揮する。「自分にしか打てない」「打ちたい所に打つ」を信条とし、あらゆる〝場面〟を自在に打ち分け、自分が最善と思った手は愚形や悪形であっても常識に囚われずに打つ。勝負手を発見すると時間を惜しみなく使い切る。
「日本がアメリカから一方的に見放される」のではなく、日本が能動的に「対米追従からの脱却」を果たし、「日本人自らが考え、選択する自主自立の国・社会」の可能性が開けるのかもしれない最大のチャンスがやってきた。これは日本政府の問題ではなく、日本人の問題なのだ。日本人 ひとりひとりが、〝トランプ大統領〟をテイクチャンスと捉える覚悟と問題意識の深さがとわれているのである。
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