Industrie2.5 「電気」と「インターネット」の間


オルタナティブな産業革命ーリ・コンシャスなアーツアンドクラフツ

第2.5次産業革命マルチチュードの挑戦


「Industrie 2.5」という言葉は今後、間違いなく世界の産業経済における重要なキーワードだろう。2.5とは第二次第三次産業革命における「電気」と「インターネット」の間を指す。政府や研究機関、産業界などのエスタブリッシュメントの機関は通さない、マルチチュードによる第2.5次産業革命と銘打った日本の国家戦略は、果たして壮大な夢物語なのか、それとも時代の必然か。「インダストリー2.5」は、モノづくりの現場を変えるだけでなく、HECPー人権・環境・コミュニティ・公共などの社会問題の解決にも繋がるという。国際競争力の強化と、世界を牽引するリーダーとしての日本のプレゼンスに向けて動き出した日本の本気が、じわりじわりと世界を巻き込もうとしている。企業や業界だけでなく、一般消費者の生活にも大きな影響を与える動きとして注目しよう。


「インダストリー2.5」を理解するための5つのステップ

STEP 1

産業革命とは?


人類は、水車や風車、馬力などの自然の力を利用し、手作業でモノを作る次元から、効率化と省コスト化を目指して一歩一歩前進してきた。第1次、第2次産業革命を経て、我々は今、IT技術を駆使する第3次産業革命の発展途上にあると定義付けられている。

1760〜1830年代

第1次産業革命: 石炭で動く蒸気機関の発明による機械工業化

1860~1900年代

第2次産業革命: 石油と電力による大量生産、大量輸送の実現

1970年代~現在

第3次産業革命: IT技術の発展による生産の自動化、機械の制御

2025年~

第4次産業革命: 人工知能(AI)とITによる考える工場、繋がる産業へ


STEP 2

第2・5次産業革命とは?

テクノロジーの限界と進歩のパラドックス


第一次第二次第三次と続く、産業革命後の科学技術の急速な進歩は、際限のない生産と利益追求、抑制のない消費の結果としての廃棄物の山は「芸術」では決してない。ITや科学技術の急速な進歩は、人間の衣食住や医療などの良好な生活や環境や安心を、ひとまずは生み出したかにみえている。しかし、デメリットとしてさまざまな環境汚染や資源の有限性への心配がある。経済活動における「大きな工場」でのモノの生産が人間に幸福をあたえる万能のものとは云えなくなった。また、省資源や環境汚染防止のための技術的研究が続けられている。このことは、確かに再び科学技術による解決を目指すという循環の中にある。しかしながら、さまざまな法律や規制により、現状からの方向転換を図ろうとしているが、科学技術や法による転換の方法は、更なるパラドックスを生み、個人の行動についてみるとき、人間本来のあるべき姿を再認識させていく力はここでもまた万能ではない。

「小さな仕事場」でのモノ作りは手工業であるため効率的ではなく、金銭的利益も少ないものである。しかし、現代文明社会への疑問を抱くときに、もうひとつの価値観、もうひとつの生活様式を認め合っていく社会、そのなかでなりたつ経済生活はどのようなものであるかについて、考えつつ実践していこうとする人びとへの「教育効果」は、人間の本性にたちかえって考えるものである。人間自身の五感の再開発を促し、体験を通して自然への畏敬や人間どうしの尊重や信頼を深めていこうとする態度が日常的に存在することが、たとえITやハイテクの時代にあって、分業の発達している時代においても、どうしても必要であろう。このようなことが次世代への贈り物であると思われる。

現代では、労働の至高状態として芸術というものが設定されている場合が多い。不自由な労働から開放された彼岸に、芸術が存在すると考えられがちである。つまり、日常と非日常ー労働の目的として、芸術が考えられている。ところが、インダストリー2.5では、この関係が逆転している。

芸術の目的こそ、労働であり、クラフトマンシップという概念が成り立つのは、このような「労働の喜び」がアーツアンドクラフツの先に見ることができるからであるとする。そして、IT時代においてのクラフトマンシップはアマチュアの世界での日常性がは「家と地区」の共同体であるThe Regionでいかされ、これがアートとコモディティの実践的統合を図り、日常を芸術的に生きる基礎とするのである。教育や啓蒙の場面では倫理的に人間が自然と共存していくことについてのひとつの方向を内包し、来るべき人間の活力の源泉の在りかを指し示している。


STEP 3

インダストリー2.5が目指す世界とは?


このまま、第四次、第五次と続く産業革命が人類にとって素晴らしい未来や環境を提供するのか。第4次産業革命は「まだ起きていない」ということを、ここでもう一度おさらいしたい。ITを活用した先進的なシステムが、閉ざされた空間の中で実現されている状況は、まだ第3次革命の延長なのだ。

リ・コンシャスとは主張する生き方である。 材料を揃えようと思うよりも手元にあるものや残ったものをどう利用するか、どう再生するかを考える。「もったいない」という精神。 自然環境を中心に地域や身の回りにある素材、不要なものやガラクタを分解したパーツを徹底利用し資源を大切にする思想、アラウンド・リソースという考え方だ。素材を生かし決して過度な技巧に走らず、多少不細工でもどことはなく愛嬌がありアーティステック。そして、何よりもインパクトにあふれ存在感抜群である。リ・コンシャスはモノづくりは食や住空間、地域や都市に至るまでそのクリエイティブなスタイルは存在感抜群で強い主張があふれている。 高齢者のハンドメイド・スキルを高めICTや市場原理主義によって奪われた”手仕事”そしてクラフトマンシップを取り戻すのである。それはウイリアムモリスのアーツアンドクラフツやガンディーのチャルカ思想から学び現代のコモディティーに反映した持続可能な事業活動として、様々なビジネスシーンとリレーショナルに連携することにより活動の輪がさらに広がる。


STEP 4

アートとコモディティの統合という、パラダイムシフト


工場の生産工程が繋がり、さらには、販売店と工場、流通経路など、モノやサービスに関わるすべての施設が企業や国の垣根を越えてネットワークで繋がる社会。これが進むと、大量生産型の方が価格を抑えられるという、これまでの常識は脆くも崩れ、オーダーメイドでも大量生産品と同等の価格で製品を製造できるようになる。工場が変われば労働者の生活が変わり、価格や物流の変化が消費者の行動を変える。新しいビジネスモデルが誕生し、社会が変わる。


STEP5

マス・カスタマイゼーションの時代へ


さらに、インダストリー2.5では、工場と倉庫、流通経路、販売店など、関連施設すべてを世界中のマルチチュードたちが、自己学習とクラウドネットワークで繋ぐ。将来的には、企業や業態の枠組みを超えてネットワークを結び、世界の疲弊地区、紛争地区、災害地区における「小さな仕事場」を「1つの大きな工場」に見立てるという構想を描いている。

生産や流通工程の最適化を進めると、これまでの「集中型」から、「分散型」「個別型」に生産サイクルの考え方が逆転するというパラダイムシフトが起こり、工場はもはや製品を画一的に大量生産する場所ではなくなる。顧客のニーズの多様化を反映した特注品を、低コストの大量生産プロセスで実現する「マス・カスタマイゼーション」の時代が到来する。

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