世界を変える「キーワード」ー
〝生活の簡素さ〟re-conscious(リ・コンシャス)
リ・コンシャスとは、アートと工芸をつなぎ、消費者と生産者をつなぐ〝社会デザイン〟のパラダイム・シフトを求める。
パラダイム・シフトとは、個の逆転である。「人には、劇的に考え方や感性が変わる瞬間がある。」それまでの常識が一気に覆り、新しく目が覚めたような気分になる。このような体験を、パラダイム・シフトと呼ぶ。単なるきっかけがあったり動機を備えていたりするだけでは、人はそう変われないものである。パラダイム・シフトはもっと強力で不可逆的だ。
第一次第二次第三次と続く、産業革命後の科学技術の急速な進歩は、際限のない生産と利益追求、抑制のない消費の結果としての廃棄物の山は「芸術」では決してない。ITや科学技術の急速な進歩は、人間の衣食住や医療などの良好な生活や環境や安心を、ひとまずは生み出したかにみえている。しかし、デメリットとしてさまざまな環境汚染や資源の有限性への心配がある。経済活動における「大きな工場」でのモノの生産が人間に幸福をあたえる万能のものとは云えなくなった。また、省資源や環境汚染防止のための技術的研究が続けられている。このことは、確かに再び科学技術による解決を目指すという循環の中にある。しかしながら、さまざまな法律や規制により、現状からの方向転換を図ろうとしているが、科学技術や法による転換の方法は、更なるパラドックスを生み、個人の行動についてみるとき、人間本来のあるべき姿を再認識させていく力はここでもまた万能ではない。 「小さな仕事場」でのモノ作りは手工業であるため効率的ではなく、金銭的利益も少ないものである。しかし、現代文明社会への疑問を抱くときに、もうひとつの価値観、もうひとつの生活様式を認め合っていく社会、そのなかでなりたつ経済生活はどのようなものであるかについて、考えつつ実践していこうとする人びとへの「教育効果」は、人間の本性にたちかえって考えるものである。現代では、労働の至高状態として芸術というものが設定されている場合が多い。不自由な労働から開放された彼岸に、芸術が存在すると考えられがちである。つまり、日常と非日常ー労働の目的として、芸術が考えられている。ところが、インダストリー2.5では、この関係が逆転している。 芸術の目的こそ、労働であり、クラフトマンシップという概念が成り立つのは、このような「労働の喜び」がアーツアンドクラフツの先に見ることができるからであるとする。アートとコモディティの実践的統合を図り、日常を芸術的に生きる基礎とするのである。教育や啓蒙の場面では倫理的に人間が自然と共存していくことについてのひとつの方向を内包し、来るべき人間の活力の源泉の在りかを指し示している。
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